こちらの記事をお読みの方の中で、上記のような疑問をお持ちになっている方も多いのではないでしょうか。そもそも「STO」の知名度は高くはないため、知らない方も多いはずです。
STOとは不動産などの有価証券をデジタル化し、ブロックチェーンを利用した取引によって資金調達を行う仕組みのことです。
日本政府もSTOに適応した法整備を進めるなど、今後発展していく可能性が高いと見られています。特に、不動産の分野においては、STOは大きな影響を与えると考えられており、今後の不動産投資のあり方を変える可能性もあるでしょう。つまり、STOについて理解しておくことは不動産投資を行っていく上で、重要な知識といえます。
本記事では、STOの基礎知識と不動産の分野に与える影響について、詳しく解説をしていきます。不動産投資・ブロックチェーン技術に関心がある方はぜひ参考にしてください。
STOとは、セキュリティトークンオファリング(Security Token Offering)の略です。
この「セキュリティ」とは有価証券を表しており、「トークン」とはここではブロックチェーンを利用した独自通貨を表しています。
一言で言うと、STOとは「有価証券の機能がついた独自通貨による資金調達のこと」です。
以下にてそれぞれ、有価証券とブロックチェーンについて、詳しく解説していきます。
なお、当サイトのプロデューサーである、八木チエのYouTubeチャンネル「不動産投資の女神チャンネル」にて、分かりやすく解説する動画も公開しておりますので、ぜひご覧ください。
有価証券とは、株や国債、社債などの財産に関する権利を表す証券や証書のことです。
金融商品取引法で、国債、社債などの19種類が定められています。
また、この金融商品取引法は2020年5月1日に法改正されており、セキュリティトークンは金融商品取引法の適応対象となりました。
さらに、電子記録移転権利に関しては厳格な規制がされている第一項有価証券とみなされ、国債や株券などと同様の扱いを受けることになりました。
ブロックチェーンとは、複数のコンピュータでデータを共有することによって、データの改ざんを防ぎ、透明性を実現した技術です。要するに、独自のネットワークを構築し、ネットワーク上で取引されたデータを全員で確認しあえる仕組みのことを言います。
ちなみに、このブロックチェーンを利用した代表的なものが「ビットコイン」になります。
現在、STOの対象になりそうなものは、「社債」や「不動産」です。
また、株についても検討されており、収益を生むものなら、すべて対象になる可能性があると言われています。
ただし、STOはまだ発展途上であるため、様々な課題も存在しています。
その課題を克服することができれば、今後市場が拡大していくことも期待できます。
国内でもSTOの事例があるのが社債です。
野村総合研究所が2020年3月30日にセキュリティトークンであるデジタル社債を発行しました。
また、みずほファイナンシャルグループも個人向けデジタル社債の実証実験をおこなっており、今後もデジタル社債が発行されることは増加していくと考えられます。
不動産のSTOについては、海外の事例が注目を集めました。
例えばアメリカでは、2018年8月にクラウドファンディング会社によって実施された20億円のホテルの事例があります。
ほかにもイギリスでは、学生向けの寮をトークン化したもので、500ポンドから扱える事例があります。
このように、高額な不動産をトークン化して、分割しやすい独自通貨として扱えるようになることで、多くの人が投資できるようになっているのです。
国内での不動産STO事例はまだ少ないものの、いくつかは出てきています。
最新の技術を取り入れた新しい資金調達の方法として注目を集めているSTOには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
STOのメリットは大きく以下の4つが挙げられます。
データ改ざんのリスクが低く、高い安全性を誇る
24時間取引・決済が可能
コスト削減ができる
所有権の分割をしやすくなる
それぞれについて、説明していきます。
STOはブロックチェーンを利用したものであるため、データの改ざんが困難で、高い安全性を誇ります。
改正金融取引法でも、規制が厳しい第一項有価証券に分類されており、取引が監視しやすくなっています。
一方、過去に存在したブロックチェーンを活用した資金調達であるICO(Initial Coin Offering)では、法令が整備されておらず、資金調達後に事業が失敗してしまいトークンが消失することや詐欺などの事案が多くありました。
STOは、上記の失敗を活かしているため、より安全性が高いものになっています。
ブロックチェーンにより取引の記録を中央で一括管理されるサーバーではなく、分散された複数のコンピュータで共有しているため、技術的には証券取引を24時間365日行うことができます。
そのため、将来的には証券取引所で扱われている金融商品と違い、いつでも好きな時間に取引できるようになるといわれています。もちろん、決済も同様に行うことが可能です。
一方、通常の証券取引の場合は、決済日が売買成立した約定日から3営業日後になっていますが、STOでは、即時に決済ができるため、取引の流動性が非常に高くなると言えます
セキュリティトークンはプログラムを組み込んでカスタマイズできるため、コスト削減に繋がります。
なぜなら、スマートコントラクトという契約を自動で行う技術を組み込むことで、証券の小口化や配当などの作業を自動化できるからです。
このように、今まであった複雑な手続きをセキュリティトークンによって簡略化することができ、時間とコストを大幅に削減できるのです。
また、自動的に契約を行なえるため、人の手による仲介も必要なくなります。そのため、証券会社のディーラーを通しての取引も必要なくなるでしょう。
セキュリティトークンを利用して資産をトークン化することで、非常に高額な金融資産を小さな単位で分割できるため、多くの人に所有権を分けることが可能となります。
現状では、非常に高額な金融資産を分割すると、管理コストが高くなってしまうため、実施されることはあまりありません。しかし、セキュリティトークンを利用すれば、それが簡単にできてしまうのです。
所有権の分割メリットを最も大きく享受できる、不動産や美術の分野で注目がされています。
例えば「ゴッホ」の作品のように高額な作品の所有権を分割することで、個人の方でも容易にオーナーになれます。
このように、STOは不動産や美術でも、所有権を分割することで資金調達を行える仕組みとして大きく期待されています。
ここまで、STOのメリットや可能性について、解説してきました。
では、不動産の分野でSTOがおこなわれることによって、どういった変化が起きるのでしょうか?
大きく以下の4つの変化が挙げられます。
• 世界中の不動産に簡単に投資が行える
• 観光施設やスポーツ施設などの不動産投資のリターンとして、金銭ではなく、サービスをリターンとして受け取れる
• さまざまな形での不動産投資が可能になる
それぞれについて、解説していきます。
上記の通り、STOを実施することで、高額な不動産を小口の証券に分割できます。
例えば、STOによって100億円の不動産を1万人に分割することも可能になります。
このように、多くの人が高額な不動産に対しての投資を行えることで、資金調達がしやすくなり、不動産投資市場も活発になると予測されています。
不動産をセキュリティトークン化したものをデジタル証券取引所に上場することによって、世界中の不動産に対して投資がおこなえるようになる可能性が高いです。
実際に、日本の不動産をシンガポールのデジタル証券取引所である「iSTOX」に上場させる計画を東海東京が進めています。
「iSTOX」に上場することによって、アジアの機関投資家や富裕層のお金を呼び込み、日本に新たな方法で資金調達ができると考えられます。
現状、不動産投資におけるリターンは収益を分配する仕組みがほとんどです。
一方、セキュリティトークン化すると、一定の金額を投資することで、宿泊できるサービスなどをリターンとして提供できるのではないかと考えられます。
所有権を分割できることや、トークンを所持している人が簡単にわかることで、実現できる可能性があるのです。
また、金銭とサービスを組み合わせてリターンにするようなパターンも予想されます。
このようにサービスをリターンとして提供することは、不動産投資をより活発にする可能性を秘めていると言えるでしょう。
実際にサービスをリターンとして受け取る「葉山の古民家家づくりファンド」という不動産STO商品がすでにスタートしています。
STOが不動産で活用されることで、さまざまな不動産に投資できるようになります。
例えば、リゾート施設やアミューズメントパーク、文化施設などへの投資が可能です。さらに、文化施設などの収益性が低い施設でも、サービスをリターンにすることにより、資金調達が簡単になります。
また、ふるさと納税制度のように、支援や応援とサービスのリターンを組み合わせるといった手法を不動産投資で行うことも可能になるでしょう。
このように、今までにない形の投資を行える可能性が高くなります。
STOは不動産投資の未来を大きく変える可能性がある技術です。そのため、今のうちからSTOについて知識を持つことが重要となります。
国内での事例はまだ少ないため、情報を集めることは難しいですが、国内で話題になる前に注目しておくことで、投資のチャンスを逃さず活かせるでしょう。
今回解説した事例等を参考にSTOへの理解を深めましょう。