「人生100年時代」とは、イギリスの組織論学者リンダ・グラッドソン氏がベストセラー書籍『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』で提唱した言葉です。グラッドソン氏は著書の中で、「健康寿命が100歳前後まで伸びると予想される将来において、過去の資金計画は崩壊し、労働市場は大きな変換を余儀なくされる」と指摘しています。
健康寿命が世界トップの日本にとって、老後資金の確保は特に重要な課題です。そこで今回は、人生100年時代を見越した老後資金作りのポイントや不動産投資の役割、メリットなどをみていきます。
日本政府は「人生100年代時代」を見据え、2017年に「人生100年時代構想推進室」を設立し、早期から対策を講じています。しかし、実際に私たちが安心して老後を過ごすにはどのくらいの老後資金が必要なのでしょうか。日本人の平均寿命の現状や老後に必要な資金を紐解いていきましょう。
日本人の平均寿命だけでなく健康寿命(日常生活が制限されずに暮らせる期間)も高いことから、より多くの老後資金が必要とされています。
厚生労働省が発表した「令和元年簡易生命表の概況」によると、2019年時点での女性の平均寿命は87.45歳、男性は81.41歳。また65歳の人の平均余命(その後何年生きられるかという期待値)では、男性は19.83歳、女性は24.63歳でした。つまり男性は85歳、女性は90歳近くまで生きる試算となります。
また、内閣府が発表した「令和元年版高齢社会白書」によると、健康寿命は2010年と比べて2016年で延伸し(男性1.72年、女性1.17年)、平均寿命と比較しても伸びが大きいとわかりました。
これらのデータからも、ゆとりある老後を過ごすには、退職後も長く続く老後生活に備えた十分な備えが必要だといえるでしょう。
では余裕ある老後を過ごすには、具体的にどのくらいの資金を確保すれば良いのでしょうか。公益財団法人の生命保険文化センターの調査(2016年)によると、老後の2人暮らしで必要な生活費は最低でも月22万円。余裕ある生活には月30万円以上(平均月34.9万円)は必要だと約8割の人が回答しました。
これらの金額から老後に必要な生活費を月30万円とし、60歳で退職した老夫婦2人が100歳まで生きた場合に必要な資金を概算すると総額は次の通りです。
つまり、老夫婦2人が旅行や趣味を楽しみながら100歳まで金銭的に余裕ある生活するには、約1億4千400万円の老後資金が必要になります。では、実際に老後にもらえる年金や退職金の額でゆとりある老後は実現可能なのでしょうか。収支のシミュレーションしながら照らし合わせてみましょう。
国民年金基金機構によると、2019年段階の厚生年金を受給額は、平均して月220,266円(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な額)。つまり、老夫婦2人が40年間で受け取る年金の総額は単純計算すると次の通りです。
また、日本経団連合会の調査によると、2019年に退職した人(大卒)がもらえた退職金は約2,255万円でした。この支給額を基準とし、100歳まで生きた場合を想定した収支をまとめると以下の通りです。
つまり、余裕ある老後を過ごすための老後資金が約1,500万円以上不足するとわかります。ただし、実際に支給される年金は職業形態や勤続年数などによって変動しますし、今後少子高齢化が進むと年金の支給額が減らされたり、会社の業績悪化などにより退職金が減らされたりも考えられるでしょう。想定よりも収入が大きく減る可能性があると見越して、さらなる蓄えへの対策が必要です。
人生100年時代に向けての老後資金の問題を踏まえ、不動産投資が注目を集めています。この章では、不動産投資が注目を集める3つの理由についてみていきましょう。
早期から投資をスタートできれば、必然的にローンを完済できる時期も早まるため、その後は家賃をそのまま老後資金に当てられます。例えば、ローンを65歳までに完済できれば、不労所得として家賃を年金がわりに活用できるのです。
不動産投資は修繕費や経費などによりマイナス計上できる年があるため、赤字を通算して所得を抑えれば節税効果が期待できます。具体的には、不動産投資で得た収入と本業の仕事の収入を合算して確定申告する際に、源泉徴収された税金が還付される流れです。
金融機関から投資の元手となる融資を受ける際に、団体信用生命保険に加入すると、生命保険の恩恵を享受できます。例えば、ローンの残額がある状態で投資者が他界した場合、ローン残高を全て保険で賄うことも可能です。遺族に金銭的な迷惑をかけず済むうえに、ローンが完済された不動産だけが残るため、遺族は引き続き家賃収入から収益が得られます。
不動産投資は時間を味方して収益を最大化できる特徴があるため、早いうちから投資を始める方が圧倒的に有利とされています。この章では、高齢者が不動産投資を始めるリスクについてみてみましょう。
一般的に高齢になるほど融資を受ける際に不利になるといわれています。物件の収益性やリスクを考慮した場合、年間の家賃収入のうちの返済比率(どのくらいを返済にあてるかの比率)は重要な指標だからです。
例えば、金融機関からの融資に年齢制限があり、79歳までが限度の場合、35年ローンを得るには44歳〜45歳までには最低でもローンを組むべきという試算になります。高齢でも融資が受けられるケースはありますが、1歳でも早く不動産投資を始めた方が選べる物件の条件面で圧倒的に有利です。
若いうちは失敗しても時間をかけて失敗を補えますが、高齢の場合、計画性の甘さにより生じた負債を次の世代に引き継がせてしまうリスクがあります。高齢者が不動産投資のローン返済で陥りがちな失敗パターンは次の通りです。
これらのリスクは必ずしも高齢者だけに該当するわけではありませんが、特に高齢者は「自分が生きている間にローンを返済できるか」といった投資の計画性が重要になってきます。
先述した人生100年時代を見据えた対策として、不動産投資が注目を集めている理由を踏まえ、老後生活への具体的なメリットをみていきましょう。
年齢を重ねると、ささいな原因で身体を痛めてしまったり、予期せぬ病気になったりする可能性が高まります。健康を損ねると働き口の門戸が狭くなりますし、若い頃のようなムリもききません。不動産による不労所得があれば、身体的拘束なく自動的に収益を得ることが可能です。
株式やFXなどさまざまな投資先がありますが、景気や世界経済の動向に大きな影響を受けるため、不安定性を懸念される方もいらっしゃるでしょう。しかし、不動産投資は家賃収入を主な収入源とするため、人々の生活に根ざした投資先であり、時流による影響が少ない点がメリットです。株式やFXのような評価額のアップダウンが少ないため、安定した長期運用が期待できます。
賃貸用不動産をもっているだけで精神的なゆとりができます。景気や事不慮の事故などは自分でコントロールできないものですが、思いがけない事態でも、不動産は着実に利益を生んでくれるからです。不動産投資をすれば、さまざまな状況における金銭的リスクへの備えとなるため、精神的な負担を和らげてくれる効果があります。
いざ不動産の投資を始めようと決意しても、何を基準にして物件を選べば良いのかわからない方も多いでしょう。投資初心者にも選ばれている「マンション投資」のポイントについてみていきます。
東京都や関東周辺の不動産は賃貸需要が高いため、初心者でもスタートしやすいエリアとされています。都心へのアクセスに便利なエリアの物件も視野に入れると、物件選定の選択肢がグッと広がるでしょう。
単身赴任や独身者向けのワンルームは入居者の需要が高いため、投資初心者にも向いている間取りといわれています。部屋数が少ない分、ファミリー向けのものと比べて購入価格も低めに設定されている物件が多いため、参入しやすいでしょう。
中古物件は購入費用が安く済みますが、修繕費や維持費がかさむ可能性があるため追加コストへの注意が必要です。その点、新築や築浅の物件は入居者に人気があるため、予期せぬ修繕費の加算や空室などのリスクが低い特徴があります。
今回は、人生100年時代を見越した老後資金作りのポイントや不動産投資の役割・メリットなどをみてきました。要点は次の通りです。
時間を味方につけた不動産投資を早期に始められると、老後に標準を併せてローン完済が可能です。本記事でご紹介した内容を、人生100年時代を豊かに過ごすための最初の1歩としてぜひお役立てください。