不動産投資とは

イールドギャップとは?イールドギャップの意味や活用方法を徹底解説!

2021/02/26
イールドギャップとは?イールドギャップの意味や活用方法を徹底解説!

不動産投資について、勉強していくと「イールドギャップ」という言葉に出くわします。

恐らく、不動産投資を行っている方の中でも、ご存知ない方もいらっしゃるでしょう。

実は、このイールドギャップは、投資効率を見ていく上で非常に大切な指標です。

知っているのとそうでないのとでは、不動産投資の成否に大きく影響を与えることでしょう。

こちらの記事では、イールドギャップの意味や、活用方法について徹底解説していきます。

イールドギャップとは?

イールドギャップ(=Yield gap)は、「投資利回り」と金融機関からの「借入金利」の差を指します。

この指標は、投資効率を見ていく上での重要な指標の1つです。

例えば、価格が8,000万円の収益物件を購入するのに、金利3.5%で金融機関から借入を行い、年間の家賃収入が720万円だったとしましょう。

このケースでは、

投資利回り:720万円÷8,000万円×100=9.0%

イールドギャップ:9%-2.5%=6.5%

という計算となります。

このイールドギャップの数値が、大きいほど投資効率が良いという判断になります。

イールドギャップを計算する理由とは?

イールドギャップを計算する理由とはなんでしょうか。

それは、計算式の意味を考えていただくと、ご理解いただけると思います。

第1章で、計算式を投資利回りと借入金利の差であると説明しました。

不動産投資において投資用物件を購入する際に、利回りを重視する方が多いです。

もちろん、それはそれで正解です。

しかし、いくら利回りが高くても借入金利がそれに見合っていなければ、投資効率としては良いと言えません。

借入金利が高いということは、毎月のローン返済金額も大きくなりキャッシュフローが回りにくくなってしまいます。

 例として、以下の2点を比較してみましょう。

  • 【ケース1】価格が5,000万円の収益物件で年間の家賃収入が350万円
  • 【ケース2】価格が5,000万円の収益物件で年間の家賃収入が400万円

さて、どちらが良いでしょうか?

これだけ見ると、【ケース2】の方が良く見えます。

投資利回りを計算すると、

  • 【ケース1】350万円÷5,000万円×100=7.0%
  • 【ケース2】400万円÷5,000万円×100=8.0%

となり、当然【ケース2】の方が高くなります。

では、次に借入金利の条件を加えてみましょう。

  • 【ケース1】価格が5,000万円の収益物件で年間の家賃収入が350万円、借入金利は2.0%
  • 【ケース2】価格が5,000万円の収益物件で年間の家賃収入が400万円、借入金利は3.5%

さて、いかがでしょうか?

どちらが良いか、イマイチよくわかりませんが、イールドギャップを計算してみると

  • 【ケース1】7.0%-2.0%=5.0%
  • 【ケース2】8.0%-3.5%=4.5%

となり、【ケース1】の方が高くなり、投資効率が良いということになります。

金利まできちんと鑑みて投資効率を判断する。これがイールドギャップを計算する理由なのです。

イールドギャップの計算シミュレーション

イールドギャップの計算には、「実質利回り」を使う

さて、第1章で計算式に「投資利回り」とありましたが、具体的にどのように解釈したらよいのでしょうか。

利回りといえば、「表面利回り(グロス利回り)」と「実質利回り(ネット利回り)」と呼ばれるものがありますが、イールドギャップの計算には、どちらを利用するべきなのでしょうか。

まずは、表面利回りと実質利回りの違いについて簡単に触れておきましょう。

表面利回りは、年間の家賃収入を物件価格で割り算した数字です。

計算式にすると以下のようになります。

一般的に不動産会社が投資利回りを紹介する際には、こちらの数字が使用されています。

収益物件を大雑把に捉えるだけであれば、こちらの指標は便利ですが、経費を考えていない数字なので、あくまで目安にしかなりません。

一方で実質利回りは、年間の家賃収入から運営にかかる経費を差し引いた金額を物件価格と購入時にかかった費用を合算した金額で割り算した数字です。

計算式にすると以下のようになります。 

運営にかかる経費には、固定資産税や都市計画税などの税金やマンションの修繕積立金や管理費などが含まれます。

購入時にかかる費用としては、仲介手数料をはじめとして登録免許税、司法書士報酬、印紙代などが含まれます。

表面利回りと実質利回りの計算式を比べていただくと、年間家賃収入と物件購入価格が同じケースでは、実質利回りの方が、分子の数字が小さくなり、分母の数字が大きくなります。

運営にかかる経費が0で、購入時費用が0であれば両方の利回りは等しくなりますが、そのようなことはあり得ません。

つまり、必然的に「表面利回り>実質利回り」となるのがご理解いただけると思います。

不動産投資の投資効率を正確に把握するための、イールドギャップを計算するにあたっては、経費をきちんと盛り込んである実質利回りを分子として計算するべきなのです。

シミュレーション

実際にシミュレーションしてみます。

一棟アパート投資

  • 物件価格:7,000万円
  • 借入金利:2.5%
  • 購入時にかかる費用:350万円(物件価格の5%でシミュレーション)
  • 部屋数:8部屋
  • 年間家賃収入:6万円×12ヶ月×8部屋=576万円
  • 固定資産税及び都市計画税(年間):30万円
  • 年間修繕積立金:80万円
  • 年間管理費:45万円
  • その他かかる経費:60万円
  • 運営にかかる経費合計:30万円+80万円+45万円+60万円=215万円
  • 実質利回り:(576万円-215万円)÷(7,000万円+350万円)=4.9%
  • イールドギャップ:4.9%-2.5%=2.4%

区分マンション投資

  • 物件価格:2,000万円
  • 借入金利:2.0%
  • 購入時にかかる費用:140万円(物件価格の7%でシミュレーション)
  • 部屋数:1部屋
  • 年間家賃収入:9万円×12ヶ月=108万円
  • 固定資産税及び都市計画税(年間):7万円
  • 年間修繕積立金:18万円
  • 年間管理費:12万円
  • その他かかる経費:5万円
  • 運営にかかる経費合計:7万円+18万円+12万円+5万円=42万円
  • 実質利回り:(108万円-42万円)÷(2,000万円+140万円)=3.1%
  • イールドギャップ:3.1%-2.0%=1.1%

2つのパターンのシミュレーションを行いました。

1点目の一棟アパート投資では、イールドギャップが2.4%、2点目の区分マンション投資でのイールドギャップは1.1%と算出されました。

一般的にこのイールドギャップは2.0%を超えているとよいとされています。

なお、これは、あくまでもシミュレーション上の話です。

区分マンションと比べて、一棟アパートの方が必ずしもイールドギャップが高くなるという議論ではありませんので誤解のないようにお願いします。

イールドギャップを利用して投資を判断する際の留意点

第2章および第3章で借入金利の重要性について解説してきました。

利回りが高く、借入金利が低ければイールドギャップの値は良い数字が出てきますが、果たしてそれさえ良ければよいのでしょうか。

この第4章では、考慮してほしいもう1つのキーワードについて触れていきます。

それは融資を受ける「期間」です。

例えば、5,000万円の借り入れをしたとしましょう。

金利が2%と3%の場合、2%の方がイールドギャップの数字は良くなるというのは、前述の計算の通りです。

では、次のケースを考えてみましょう。

  • 【ケース1】融資金額5,000万円、投資利回り6%、借入金利2%、融資期間15年間
  • 【ケース2】融資金額5,000万円、投資利回り6%、借入金利3%、融資期間35年間

【ケース1】が4.0%、【ケース2】が3.0%となり、【ケース1】の方がイールドギャップの値は良いことは、これまで解説してきたとおりです。

では、キャッシュフローに影響を及ぼす毎月のローン返済額はどのようになるでしょうか。

  • 【ケース1】321,754円/月
  • 【ケース2】192,425円/月

このように金利が低くても借入期間が短いと、月々のローン返済額は大きくなります。

月々のローン返済額が大きくなりすぎると、キャッシュフローに影響を及ぼし、本来必要な時に、キャッシュを投入できなくなる恐れがあります。

イールドギャップだけに捉われることなく、期間も考慮することが大切です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

イールドギャップの意味や計算方法について解説してきました。

不動産投資を成功させるために、活用していただきたい指標です。

是非とも、理解を深めていただき、投資用物件を購入する際にお役立てください。

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八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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