不動産投資において、ローンを組む際に入るケースが多い団体信用生命保険(団信)。
その中に「がん団信」というものがあります。
俗にいう団信は、オーナーに万が一のことがあった場合に、ローン残債がなくなるというものですが、がん団信は、がんと診断された際にローンの残債がなくなるというものです。オーナーやその家族の方にとっては、万が一の備えてという点でメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。
こちらの記事では、がん団信に加入するにあたってのメリット・デメリット・留意点について徹底解説していきます。
不動産投資で物件を購入するにあたっては、金融機関からローンを借り入れるケース一般的です。
ローン契約者であるオーナーに万が一のことがあった場合や、高度の障害を患ってしまった際に備えて、ローンの残債がなくなる「団体信用生命保険」への加入が義務付けられているケースが多いです。
ここでいう「がん団信」は、簡単にいうと団体信用生命保険の「がん」版の側面を持っています。加入義務はなく任意であるケースがほとんどです。つまり、がんと診断されると、ローンの残債がなくなるといった仕組みになっているのです。
※一部ローンの残債額の1/2だけが対象といった商品も存在しています。
保険料の徴収は、多くの金融機関において、「ローンの金利に上乗せ」させる形で行っています。金融機関によって多少異なりますが、上乗せ率はおよそ0.1%~0.2%程度となっています。
ところで、上乗せ率が0.1%だった場合に、ローン返済額はどのくらい増えることになるのでしょうか。例として、35年ローンで3,000万円の融資を受けたとしましょう。
これらの差額は、月々にして100,925円-99,378円=1,547円となります。また、35年間の返済総額にすると、42,388,412円-41,738,968円=649,444円となります。
この差額を高いと見るか安いと見るかは、それぞれオーナーの方によって異なるのではないでしょうか。
最大のメリットは、なんと言っても「手厚い保障」が受けられることです。契約者自身(オーナー)の家族に負担をかける可能性を少なくするためのリスク回避という側面が強くなります。
もし、ローンが完済された場合は、家賃収入がほとんど使えるようになり、がんの治療費にあてることや、ご家族の生活費・学費などに活用することができます。無事にがんが完治した後は、本来支払うはずだったローンがないため、生活に余裕が出来る可能性もあるのです。
さて、日本人のどのくらいの方が「がん」に罹患する可能性があるのでしょうか?以下の表をご覧ください。
公益財団法人がん研究振興財団が公表した資料によると、全てのがんに対して生涯を通じて罹患する確率は、男性で63.3%、女性で48.4%となっています。10年ほど前に「2人に1人はがんになる」と言われていたことがありますが、男性に関しては2人に1人どころか、5人のうち3人以上がなるというデータになっています。
この表をご覧になって、恐ろしさを感じた方がいらっしゃると思いますが、でもこれが今の日本における「がん」の罹患率の現実です。
いつ、どこで、誰が、がんになってもおかしくないような時代なのです。
次に、下記のグラフをご覧ください。こちらのグラフは、会社に勤めている方が「がん」に罹患してしまった後、どのようになったのかを表すデータとなっています。
出典:厚生労働省
会社等に勤めていた方のうち、約半数の48%がそのまま勤務しているのに対して、依願退職と解雇が34%を占めています。この中には、体がいうことをきかず、働けなくなってしまった方だけではなく、本当は働けるのにも関わらず、会社からクビを宣告され涙を飲んだ方もいらっしゃると思います。
売上を伸ばし、人件費などの原価を抑え、多くの利潤を出す・・・。
会社としては当然の動きではありますが、がん患者にとっては厳しいです。がんになる前の平均年収が罹患後に200万円以上落ちてしまったというデータ(参照)もあります。
オーナーの方自身が、がんに罹患することも十分に考慮に入れた上で、がん団信への加入を検討するべきだといえます。
一般的には、保険料が金利に上乗せされる形となります。月々のローン返済額、総返済額が増加しますので、キャッシュフローに影響を及ぼします。
とは言っても、前述のように、3,000万円の借入で金利が0.1%上昇することによる月々の返済額の増加分は、1,500円程度です。
当初は加入していたけれど、
など、途中で辞めるのも新規で加入するのもどちらも不可能です。契約の段階でよく吟味して判断をするようにしましょう。
万が一、オーナー自身が「がん」に罹患してしまい、ローンの残債が0になったとしましょう。
その後、不動産を親族に相続しようとする場合、残債がないことで不動産評価額がそのまま課税対象となります。
この場合、残債が残っている不動産を相続するより、相続税が高くなることに注意が必要です。
生命保険に加入の方は、ご存じだと思いますが、ご自身の健康状態についての「告知義務」があります。
健康状態に問題がある方は生命保険に加入することができないケースがあります。
がん団信は、生命保険の一種なので、一般的な生命保険同様に、健康状態が思わしくない場合は加入できないことがあります。
がん保険に加入していて、がんになったのに保険金が出なかった・・・。
そんな話は聞いたことがありませんか?
がんは、一般的に「悪性新生物」と呼ばれています。このケースでは、ほぼ間違いなく保険金は出るでしょう。
しかし、同じがんでも「上皮内新生物」というものがあります。上皮内新生物は、臓器の表面を覆っている上皮内に出来るものです。
この場合、転移する可能性がほとんどないという理由で、がん保険の保障の対象外となっている商品があります。そうすると、「がんになったのにがん保険が出ない」という事態になるのです。
がん団信についても同様に、がんと言っても、上皮内新生物でローン残債が完済になる可能性は、ほぼ0であると言ってよいでしょう。がん団信加入時には、「保障の対象範囲」の確認をきちんと行うようにしましょう。
一般的なガン保険の場合、いつ罹患してしまったとしても、保険金額は変わりません。一方で、がん団信はどうでしょうか。
ローンの残債は、年月の経過ともに減っていきます。がん団信の場合は、ローンの残債が対象となるので、時間が経つにつれて、実質の保険金額が減少していくということに留意しておきましょう。
また、不動産投資のがん団信は万が一がんになった時に、残債がなくなる保険になっており、一般的ながん保険のように、保険金が出るものではないこともきちんと認識しておく必要があります。
いかがでしたでしょうか。
がん団信に加入した際のメリット・デメリット・留意点について解説してきました。ご理解いただけたでしょうか。
今や、2人に1人以上が「がん」になってしまう時代です。そのリスクヘッジとして「がん団信」は有効であるといえます。今後、不動産投資を始める方については、加入を検討していただくと良いでしょう。