不動産投資を検討している方は、上記のような疑問を持たれている方も多いでしょう。
手付金とは、不動産の売買契約を結ぶ前に、買い主が売り主に渡す金銭のことです。
自身の都合での解約権を認める目的や債務不履行に対する損害賠償の担保として支払われる金銭になります。
要するに買い主と売り主の双方が安心して売買を行うためのものです。
しかし、手付金には契約を取り消す条件などがあり、これらをよく理解しておかないとトラブルになりかねません。
こちらの記事では、手付金の基礎知識や手付金の相場、契約の取り消し出来る条件などについて詳しく解説していきます。ぜひ最後まで読んで頂き、参考にして頂けると幸いです。
手付金とは不動産の売買契約を結ぶ前に、買い主が売り主に渡す金銭のことです。
売り主に金銭を渡すことで、契約する意志があることを証明する目的や自身の都合での解約権を認める目的などに使用されます。
この手付金があることで、買い主や売り主の双方が安心して、売買を行うことが可能です。
手付金の種類は以下の3つです。
それぞれについて説明します。
証約手付とは不動産の取引だけでなく、各種の取引が行われたことを示す証として使用される手付金です。
相場は5〜10万円程度と少額に設定されています。
ただし、証約手付のみで設定されることは稀で、ほとんどのケースでは解約手付と違約手付としても設定されるため、手付金の金額は高額になりがちです。
解約手付とは、現在の不動産取引でも非常に多く使われている手付金のことです。
一旦結んだ契約を理由に関わらず解約するための金銭のことを指します。
例えば、売り主が売買契約を撤回したい場合は、買い主が受け取った手付金の倍の金銭を支払うことで解約が可能です。
また、買い主が解約する場合は、買い主が支払った手付金を放棄することで、契約の取り消しが出来ます。
違約手付とは契約違反があった場合の損害賠償とは別に、相手側に支払う違約金のことです。
例えば、違約手付を20万支払っており買い主が契約違反をした場合は、支払った20万円はそのまま売り主のものになります。
一方で、売り主側が契約違反した場合は、違約手付の倍額である40万円を支払うことが必要です。
このように、違約手付は債務不履行を担保するための金銭としての役割があります。
ただし、不動産売買ではあまり使用しません。
前述したように不動産売買における手付金のほとんどは解約手付になります。
その理由は次の2つです。
売買契約書に手付金とだけ記載がある場合や業者が売り主の場合には、すべて解約手付とみなされます。
上記の理由からほとんどの不動産売買において、手付金は解約手付になることを覚えておいてください。
手付金には、解除権の留保や損害賠償額の確保という目的があります。
一度契約をしてしまうと、契約自体に違反がない限り、白紙撤回は出来ません。しかし、手付金がある場合は、契約を取り消すことが可能です。
特に不動産売買は額が大きいため、直前で心変わりする可能性もあり得ます。また、急遽会社の都合で転勤になるケースもあります。こういった突発的なことが起こる可能性があるため、取り消し出来るようになっています。
しかし、売り主側は契約後に取り消されると今までの売却活動をもう一度やり直さなければなりません。
一方で、買い主側も契約が取り消されると不動産をもう一度探すことが必要になります。
手付金は、こういった手間に対しての保証という目的で設定されるものです。
手付金の放棄や倍額の金銭を支払うことで契約後であっても、契約が取り消けせると説明しました。
では、いつでも無条件で契約が取り消せるのでしょうか?
手付金による契約の取り消しには、「契約した相手が履行に着手するまで」という条件があります。
つまり、履行に着手していなければ転勤などの自身の都合でも契約の取り消しが可能です。
履行の着手は、過去の最高裁判例によって次のように解釈されています。
「客観的に外部から認識出来るような形で履行行為の一部をなし、又は履行の提供をするために欠くことの出来ない前提行為をした場合」には、「履行に着手」をしたと言うことが可能です。
具体例を挙げると次の通りです。
まず、売り主側の履行の着手は以下のような行為になります。
一方で、買い主側の履行の着手は以下の行為です。
上記のような場合は「履行の着手」該当するため、手付金を使用しても契約を取り消せません。
ちなみに、ローンの申込みについては履行の着手とはみなされないため、注意が必要です。ローンの申込みだけでは融資が決定したわけではないため、履行の着手とは言えないとされています。
続きまして、手付金を支払うタイミングや相場について説明します。
売買契約を結ぶ際の参考にしてください。
手付金は一般的には、売買締結のタイミングで支払うことが多いです。不動産投資の場合でもそのタイミングで現金で手付金を支払います。
手付金は売買代金に充当されて、残額を支払う形です。
なお、支払いは現金の場合がほとんどになります。
その理由は、不動産売買の契約は土日の場合が多く、契約成立日に支払うことが難しいためです。
ただし、遠隔地での取引や手付金の額が大きい場合には、振り込みで対応することもあります。
手付金の金額の相場としては、売買代金の5%~10%が一般的になります。
その理由は、あまりに少額の場合は契約が簡単に取り消されてしまい、高額過ぎる場合は契約の取り消しが出来ないためです。
相互のバランスが1番良いのが、5〜10%と言われています。
したがって、例えば3,000万円の不動産を購入した場合は、手付金として150万円から300万円が必要です。
決して安い値段ではないため、事前に計算して用意するようにしてください。
なお宅建業法で、宅地業者が売り主の場合は、20%を超える額の手付金は禁止されています。
手付金が原因で起こったトラブルの事例を3つ紹介します。
売り主が他に良い条件の買い主を見つけたため、そちらに売却したいと言って契約の取り消しを願い出たことによって起きたトラブルです。
当然ながら買い主の方はその物件を非常に気に入っており、契約を解除したくないと反発しました。
しかし、売り主側は手付金の倍額を支払うといって、解約を通知しました。
こういったケースの場合、基本的には手付金の倍額を支払うことで売り主は自身の都合であっても契約の取り消しは出来ます。
そのため、買い主は契約の取り消しを受け入れないといけません。
ただし、今回のケースでは買い主がすでに引っ越し業者に引っ越しの依頼をしていたために、契約の履行に着手していると主張したのです。
この履行の着手が認められたため、売り主側は契約を取り消せず、予定通りに売買は進む結果に終わりました。
上記のように、売り主から契約の取り消しを言い渡された場合は、履行の着手に該当するかどうかが争点になることがよくあります。
買い主が転勤などの自身の都合が理由で契約の取り消しを申し入れたにも関わらず、手付金の返還を求めたトラブルです。
本来なら自身の都合で買い主が契約を解除した場合は、手付金を放棄する必要があります。
そのため、手付金が返還されることはありません。
また、売り主がリフォームの発注などをしていた場合などは「履行の着手」に該当するため、契約の取り消し自体が不可能です。
そのため、自身の都合によって契約の取り消しをする場合は、違約金を支払うなどのペナルティーを負うことになります。
上記のトラブルでも、手付金の返還は認められませんでした。
こういったケースでは、手付金を返還してくれと言うのではなく、売り主側に事情を説明して話し合いを行うことが重要です。
売り主の対応次第では、手付金の一部返還や履行の着手後でも契約の取り消しが出来る可能性もあります。
買い主がローン特約付きの売買契約をしているため、契約を解除して手付金を返還してほしいと売り主に伝えたが返還してくれないために起きたトラブルです。
ローン特約とは、売り主と買い主が売買代金を金融機関からの融資で賄うことを前提に契約を結び、融資が全額または一部について審査に落ちた場合に、売買契約を無条件に解除する特約になります。
融資額が満額出なかった場合には、手付の解除や契約違反に該当しないため、支払った手付金は全額返還を求めることが可能です。
そのため、今回のトラブルでも、結果的に売り主側は手付金を返還しなければなりませんでした。
手付金は不動産売買を売り主と買い主が共に安心して行えるように、設けられた制度です。手付金を放棄、もしくは倍返しすることで売買契約を解除することが出来ます。
ただし、売買契約を解除するためには、条件があるので注意が必要です。したがって、手付金の仕組みや相場などを理解しておくことが重要になります。
手付金について、ぜひこちらの記事で紹介したポイントを参考にして頂けますと幸いです。