不動産を購入する際には、「買付申込書」を提出することが一般的となっています。
しかし、不動産購入希望者が買付申込書の記載事項にある「ローン特約」や「手付金」に関して知らないと、大きな失敗をしてしまう可能性も秘めています。
買付申込書は、どのように作成したらよいのでしょうか。
買付申込書の「よくある失敗」と合わせてチェックするポイントを解説していきます。
最後までお付き合いいただければ幸いです。
買付申込書は、購入希望者が物件を買いたい場合に、媒介業者または売主あてに提出する書面となります。
端的にいうと、「私はこの物件を気に入りました。この金額で買いたいです」といった意思表示となるのです。
申込書の書式自体は特に決まっていません。一般的には、媒介業者からもらったものを使用する形になります。
売買契約書とは異なり、買付申込書を提出することによる法的な拘束力はありません。
よって、提出した後になって「よく考えたけど買わない」となってもペナルティは発生しません。
ただ、媒介業者や売主は、契約成立に向けて動き出すことになります。
稀に、他の方に先に取られたくないからといって、キャンセルすることを前提で提出する方もいらっしゃるようです。
しかし、このようなやり方は、媒介業者や売主に対して非常に不誠実です。絶対にやってはいけません。
媒介業者からの信用がなくなり、今後投資用不動産の紹介をしてもらえなく可能性が高くなります。
実際の書類に記入する必要事項はどのようなものがあるのでしょうか。
物件名・部屋番号・所在地・専有面積などを記入します。
募集図面を見ながら、間違いのないように記入するようにしましょう。
購入条件として、購入金額・手付金・残代金・売買契約日などを記入します。
購入金額の欄には、売主から出されている売却価格をそのまま書いてもいいですが、売主側は「金額交渉」があることを見越して、最終的に売りたい金額よりも高めて設定していることが多いです。
不動産投資において、きちんと収益を上げていくためには購入金額をいかに安くできるかが1つのポイントとなります。
買付申込書に書いた金額を後になって変更することは失礼になるため、金額交渉する場合には、この段階で記入するようにしましょう。
手付金は、売買契約の際に買主が売主に対して支払うお金のことです。
この金額は、購入金額の一部となり、残った金額を残代金と呼んでいます。手付金の金額は、物件価格の5%~10%程度が目安となります。
融資の有無やその金額を記入します。
融資を利用する際には、万が一ローンの審査が下りなかった際に、「白紙撤回」出来るように「ローン特約」を入れなければなりません。
もし、ローン特約を入れていなかった場合で、最終的に金融機関から融資の承認が下りなかった場合、手付金は戻ってこないことになってしまいます。
非常に重要なことですので、覚えておきましょう。
「有効期限」の記載を忘れないようにしましょう。
理由は、大きく2つあります。
1つ目は、売主に早く判断をしてもらうためです。期限が記載されていると、売主の方もリミットを認識してくれます。
2つ目は、後々のトラブルを避けるためです。期限が記載されていないと、後になって「いつになったら購入してもらえるのか」と言われる可能性もあるからです。
買付申込書は、売買契約書ではありません。
提出したからといって、購入することが決定するものでも、購入の義務が発生することでもありません。
しかし、媒介会社や売主に対して購入の意思を明確に示すことができます。
こうすることで、媒介業者や売主の方も真摯に対応してくれるはずです。
場合によっては、他のライバルの方が減り、交渉をスムーズに進めることが出来るといえるでしょう。
売主も売り出し直後は、強気であるケースが多いです。金額交渉に応じてくれない方もいらっしゃいます。
金額面等で折り合いが合わず、一旦破談となってしまったケースも少なくありません。
その物件が数ヶ月経っても売れ残っている場合に、少しずつ弱気になってきます。値下げの検討をし始める売主もいらっしゃいます。
そのような場合に、これまでに申込書を出した方に媒介会社や、売主が優先的に値下げ情報などを教えてくれる可能性があります。
媒介会社側からすると、買付申込書を出した方は不動産の購入に対して前向きな方であるという捉え方にもなります。
媒介会社は、仲介手数料が主な収入源です。
しかし、あくまで売買が成立しなければ仲介手数料は1円たりとも入ってこない形となります。
よって、優良物件が出てきた際には「買ってくれそうな方」として、「有力な有縁者」として、過去に申込を出している方に優先的に声をかけてくれる可能性があります。
買主側にとっては、思いがけない好条件で投資用不動産を紹介してもらえることもあるのです。
前述したように、提出したからと言って必ず購入できるわけではありません。
あくまで、「購入したいという意思表示」にとどまります。
初心者の方には、この部分を勘違いされている方もいらっしゃるようです。
申込書が出された後から、媒介会社や売主は売買契約に向けて動き出します。
しかし、買主の都合でキャンセルとなってしまうと、先方のそれまでの動きがすべて無駄になってしまうのです。
法的拘束力があるものではないので、特に罰則はありませんが、キャンセルされてしまった側は一たまりもありません。
キャンセルをした買主の信用は、地に落ちて、今後物件を紹介してもらえなくなってしまう可能性が高くなります。
話が進んだあとに、あまりに不合理なキャンセルをした場合に、損害賠償を求められることもあります。
キャンセルしない意思が本当にあるのかどうか、買付申込書を出す前に、今一度立ち止まって考えるようにしましょう。
一般的に不動産取引において契約が完了するのは、「売買契約」+「手付金の納付」の両方が完了した時点となります。
それ以降、契約を解除する場合には契約を破棄しようとする方が、手付金と同額を支払う決まりとなっています。
例えば、売主側が手付金200万円を受け取っているにも関わらず、契約破棄を申し出た場合には、200万円を買主側に返還した上で、さらに手付金と同額の200万円を支払うといった形となります。
これを手付倍返しといいます。
一方で、買主側が手付金200万円を支払った後で、契約破棄を申し出た場合には、手付金は返ってきません。
これを手付放棄といいます。
どれだけ買主側に購入の意欲があり、売買契約+手付金を支払っていたとしても、物件を手に入れることが出来ないケースがあります。
それは、金融機関からの融資が下りない場合です。
融資が下りないことより契約破棄をせざる得ない場合に、手付金が返ってくる特約があります。それが「ローン特約」です。
これを入れ忘れてしまうと万が一の際に手付金が没収される形となってしまいます。必ず盛り込むようにしましょう。
買付申込書を出す際のチェックするポイントについて解説してきましたが、ご理解いただけたでしょうか。
特にローン特約を設定しているか否かで、万が一の際のダメージが大きく変わってきます。
作成に際して不安なことがあれば、不動産会社へ相談するようにしましょう。