不動産テックという言葉を聞いたことがある方はいらっしゃるでしょう。
テックは「Technology」の「Tech」のことで、日本語訳で「技術」という意味になります。
教育業界でも、「Education(教育)とTechnology(技術)」を合わせた「Edtech(エドテック)」などがあるように、さまざまな業界で技術を駆使したイノベーションが進んでいます。
不動産テックには、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
こちらの記事では、活用するメリットや成功させるためのポイントを解説していきます。
近年、さまざまな業界において、技術を駆使したイノベーションが進んでいます。
不動産テックは、「不動産」と「テクノロジー」を掛け合わせた造語で、技術を用いて不動産業界のボトルネックとなっている部分や従来からの慣習を変革していこうとする動きです。
不動産テックの調査研究や情報発信、標準化やルールの確立、携わる人材の育成・指導を目的として、「一般社団法人 不動産テック協会」という団体も設立されています。
同協会から「不動産テック カオスマップ」が公表されています。
下記のカオスマップは、第6版で2020年6月15日に発表されたものです。第7版は、2021年7月8日に発表予定となっています。
こちらのカオスマップは、不動産業界の企業やカテゴリー、それぞれの関連性を表したものとなっており、業界全体を俯瞰できるものです。
不動産テックの全体像を把握することができます。
不動産テックを活用することによって、これまで出来なかったことが出来るようになるケースや、時間が大幅かかっていたものを短縮することなどが可能になります。
ここでは、カオスマップに含まれている内容を事例とともに紹介していきます。
VR(=Virtual Reality:仮想現実)やAR(=Augmented Reality:拡張現実)がカオスマップに記載されています。
VRやARを用いると、バーシャルでの内覧会の実施や、物件完成予定地に実際に出来る予定のマンションを配置するなどして、物件周辺の環境が分かるようになったりするなどの体験をすることができます。
これを利用することで、わざわざ現地まで足を運ばなくとも、物件の状態や様子が手に取るように分かるようになることは、時間短縮の面で大きなメリットです。
カオスマップに載っている「IoT」は、「Internet of Things」のことで「モノのインターネット」と言われるものです。
外出先から、手元のスマートフォンを操作するだけで、室内のエアコンや照明などの操作が出来るほか、玄関のドアのロック解除も行えるようになります。
夏にエアコンが効いていない室内に帰宅すると、最初は汗が噴き出すような蒸し暑さにウンザリした方も多いと思います。
タイマーを設定しておけば予め室内温度を快適にしておくことも出来ますが、万が一予定が狂って帰宅が早まると意味をなさなくなってしまうケースや、帰宅が遅れると電気代が無駄になってしまうということもありました。
また、防犯上子どもに家の鍵を渡したくないご家庭や、万が一子どもが家の鍵を持っていくのを忘れてしまい、親が帰ってくるまで家に入ることが出来ないということもありました。
これらの課題も不動産テックによって解決されることになるといえるでしょう。
これまでのリフォームといえば、複数のリフォーム業者に連絡し、それぞれの業者に実際に来てもらい、その上で見積書を作成してもらい、業者の選定といった流れでした。
業者への連絡の手間や、実際に見に来てもらう日程の調整やその時間の手間など、非常に面倒くさい思いをされてきたオーナーさんも多いことでしょう。
不動産テックによって、ニーズに適した業者を選定できる仕組みが構築されます。
これによって、オーナーは円滑な業者選定や契約、施工をすることが可能になるのです。
リフォームが必要な中古物件の数も多い不動産投資業界において大きな変革であるといえるでしょう。
カオスマップの最下段の右列に記載されている「スペースシェアリング」は、長期にわたる賃貸借契約ではなく、1日~数日単位という短期間で賃貸物件を貸し出すことです。
これが不動産テックの活用によって、促進されるといえます。
例えば、出張などで2週間だけそのエリアに滞在する必要がある方がいたとしましょう。
毎日ホテルや旅館に宿泊するとなると、コストが嵩んでしまいます。
予め冷蔵庫やテレビなどを配備しておき、ホテル代わりに利用してもらうことも考えられるでしょう。
この他、1日単位での貸会議室、イベントスペースとしての活用もできます。
このように、空室期間であっても家賃収入を得ることが出来るようになる可能性があります。
不動産テックの導入によって、さまざまな情報の透明化が期待されています。
これまでよりも情報が取りやすくなったとはいえ、自身の行動を変化させなければ、これまで通りとさほど変化はありません。
世の中が変化していることを受け、不動産投資をしているオーナー自身の行動も変える必要があるのです。
「待ち」の姿勢ではなく、自ら情報を取りに行き、活用する姿勢を持つことが大切です。
不動産テックの広がりによって、オーナーの元へは、これまでと比べ物にならないくらい、情報が溢れることになる可能性があります。
情報が多くなる分処理できなくなるケースや、膨大すぎて判断が中々つかなくなることも出てくると想定されます。
そのような時に、アドバイザー的な立場で助言してくれる方がいるとスムーズにいくことも多くあります。
不動産投資においてきちんと相談できる信頼できる方を持つようにしましょう。
これまでの物件情報や取引情報は、良くも悪くも不動産業者の中のみで共有されているだけでした。
大きな金額が動く不動産売買においては、これまでオーナー自身の情報源は、仲介業者などの情報が頼りでした。
ご自身が投資用不動産を2,000万円で売却したかったとしましょう。
仲介業者からは「どう頑張っても1,800万円です。」と言われたらその通りだと思わざるを得なかったわけです。
購入する場合も同様です。
もう少し安い金額で購入できるのではと思っていても、ご自身に妥協して購入に踏み切った方も少なからずいらっしゃるでしょう。
これが、不動産テックによって、これまで以上にオープンになるでしょう。
過去に行われた取引や市場の状況などを加味し、人間だと時間がかかってしまうことでも、AI(人工知能)に分析させることによって適正価格を算出できるようになります。
不動産売買において、大損をするリスクはかなり減少することになるでしょう。
インターネットオークションは、ご存知の方も多くいらっしゃるように、出品者が品物の写真や状態などをサイトにアップし、購入希望者が入札をしていき、一般的には入札価格が高い方が落札するという仕組みです。
不動産投資とどう関係あるの?と疑問を抱かれた方もいらっしゃると思いますが、ここ最近、仲介手数料がかからない不動産売買のサイトも出てきています。
売主が物件の写真や物件情報を入力してサイトにアップし、買主の候補者たちが、それを見て購入の意思表示が出来るというものです。
インターネットオークションの不動産版に近いといえるかもしれません。
不動産テックの発展によって、このようなスキームが確立されてくると、不動産仲介業者が必要なくなる可能性もあるのです。
不動産テックの具体例やメリットについて解説してきました。
技術の進歩・発展により、これまで存在しなかったものが、今後次々と現れてくる可能性が高いです。
不動産投資を成功させるために、不動産テックに対する理解を深めるようにしましょう。