住居用・投資用問わず、マンションは購入した後はローンだけ支払えばよいというものではありません。金額の多少はあれども管理費・修繕積立金が毎月発生してきます。
マンションは集合住宅のため、エントランスや廊下、ゴミ捨て場などの「共用部分」があります。また、外壁や屋根なども他の方とある意味「共用部分」となります。これらの共用部分の修繕や清掃のために、マンションのオーナーから管理費・修繕積立金を徴収しているのです。
これらの適正価格はどのくらいなのでしょうか。また相場と比べて管理費・修繕積立金が高い物件、低い物件ではどのようなことが考えられるでしょうか。
こちらの記事で解説していきます。ぜひ最後までお付き合いください。
マンションは、「専有部分」と「共用部分」に分かれています。専有部分はオーナー個人に帰属する部分、共用部分はマンションのオーナー全体に帰属する部分になります。
管理費は、この「共用部分」の維持や管理のために利用されるお金です。例えば、管理組合の運営に係る費用や共用部分の保険料、そして管理人を置いているマンションについては管理人の人件費などが代表的なものとなっています。
築年数の経過に伴い、マンションは老朽化していきます。物件自体の修理、資産価値の維持・向上のために、各マンションでは修繕計画に基づき大規模修繕を行うことになります。
いざ修繕する時になって、「オーナーの皆さんから100万円単位で費用を徴収します」となってしまうと、支払えない方や家計が逼迫してしまう方が出てきてしまいます。そうならないために、毎月オーナーから徴収されているのが修繕積立金なのです。
国土交通省から公表されている「平成30年度マンション総合調査結果」によると、1㎡あたりの月々の「管理費」の平均は217円となっています。
出典:国土交通省
完成年次によって、多少金額にバラツキがあるものの、築15年~30年の中古マンションは220円~230円/㎡となっています。
築15年~30年の床面積25㎡のマンションの管理費は、おおよそ5,500円~5,750円、床面積40㎡のマンションの管理費は、おおよそ8,800円~9,200円付近が平均値となります。
続いて、同じ資料で公表されている1㎡あたりの「修繕積立金」は月々179円となっています。
出典:国土交通省
こちらも完成年月によってバラツキがあります。例として平成元年~平成6年(およそ築25年~30年)の平均は、月々257円となっています。平成21年~平成25年(およそ築5年~10年)の平均126円と比較すると約2倍、平成27年以降(築5年未満)の平均93円と比較すると約2.8倍となっています。
これらの平均値をもとにして、40㎡のマンションのおおよその修繕積立金を算出してみましょう。築25年のマンションにおいては、およそ10,280円/月、築10年のマンションでは、およそ5,040円/月となります。
第2章で、管理費・修繕積立金の平均値を解説してきました。
投資用不動産を購入する際に、利回りを意識して管理費・修繕積立金が低い物件を中心に探す方もいらっしゃいます。
しかし、短絡的に「お財布に優しい物件」で済ませてしまうと思いもよらぬところで損をしてしまう可能性を秘めています。
さて、適正価格よりも低い場合に、どのようなことに気を付けるべきなのでしょうか。
「マンションは管理を買え」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?
マンションは、ご存知の通りオーナー1人だけの所有ではありません。複数の所有者が共同で利用することになります。そのため、仮にご自身の部屋がどれだけ綺麗であっても、どれだけマンションの共用部分を丁寧に使用していても、他の住民の方がゴミを捨ててしまっているケースや、壁などに落書きなどをしてしまっているケースでは、最終的に良くない結果を招来してしまう可能性があるということです。その他にも、駐輪場でのルールが守られていない、植木などの手入れがされていないといったことがあると、住んでいる方にとっては気分の良いものではありません。
このようなことが横行してしまっていると、マンション内のトラブルに発展してしまう可能性があります。
さらに、まともな入居者方々は、マンションから出ていくといった選択肢をとる可能性が高くなります。
入居者が減ってしまえば、管理費・修繕積立金の徴収もままならなくなってしまい、さらに劣悪な環境になってしまっているマンションも存在するのです。
そうなってしまっては、マンションの資産価値も大きく低下してしまい、手の施しようがなくなってしまいます。
そうならないように、しっかり管理をする。これが「マンションは管理を買え」と言われる所以なのです。
共用部分の掃除が行き届いている、外観がきれいである、植木が整えられている、セキュリティーがきちんとしている・・・これらのメリットは全て住んでいる方が支払っている管理費・修繕積立金によって支えられている側面があります。お金がかけられることで、マンションの資産価値を維持しやすくなるのです。
もう1点、修繕積立金と大規模修繕費用の関係を理解しておく必要があります。下のグラフをご覧ください。
出典:国土交通省
こちらは、大規模修繕にどのくらい費用がかかったのかを表すグラフです。戸数により工事費用は前後することになりますが、大規模修繕工事のうち20%は1億円を超えていることが分かります。2億円以上かかっている工事もそれなりに多く存在しています。
この巨額の費用がどこから捻出されているのかを表したのが下のグラフです。
出典:国土交通省
全体の96.7%を占めているのが、「修繕積立金」です。第1章で、「修繕積立金は大規模修繕に利用されるもの」であると解説してきましたので、当然といってしまえば当然です。
しかし、ここで疑問を抱くオーナーの方も多いのではないでしょうか。それは、資金調達方法が修繕積立金だけではないということです。
左から2番目の「一時徴収金」とは何でしょうか。これは、修繕積立金だけで工事費を賄うことが出来ない場合に、マンションに住んでいる方から10万円単位~100万円単位で工事費用を徴収しているということなのです。普段からきちんと修繕積立金を支払っている方にとっては、たまったものではありません。
こうしたことが起きてしまう背景には、シミュレーションが甘い(=本来もっと修繕積立金を取っておくべき=修繕積立金が安い)ということが挙げられます。このような事態になってしまうのであれば、普段からきちんと徴収してもらった方が、オーナーとしてはありがたいはずです。
これらのことから、管理費・修繕積立金がやや高いことは、決して悪いことではないといえます。
いかがでしたでしょうか。中古マンションにおける管理費・修繕積立金の適正価格や、相場と比べてこれらの費用が低い物件に起こる可能性のあるリスクについて解説してきました。
管理や修繕の状況によってマンションの資産価値が変わってくることから、費用が高い物件であっても、長い目で見たら得をする可能性もあるのです。こちらの記事が中古マンションを購入する際の参考になりましたら幸いです。