昨今のコロナ禍により、不動産市況は影響を受けています。2021年7月1日に発表された路線価では6年ぶりに全国平均が下落しました。
そのような状況の中、不動産売却を考えている方もいらっしゃると思います。
今回は築古戸建て物件の売却をテーマに、売却の時に解体はするべきかどうかやそれぞれのメリット・デメリットなどを解説します。
築古戸建て物件をいざ売却を進めようとした場合に疑問となるのが、戸建てを解体するかどうかだと思います。
先に結論をお伝えすると、解体するべきかはケースによって異なります。
次にそれぞれのメリット・デメリットや適しているケースを見ていきたいと思います。
まずは築古の戸建てを解体して売り出す場合を見ていきたいと思います。
見栄えが良くなる
戸建てを解体することで見栄えが良くなります。見栄えが良くなると、購入検討者に良い印象を与えることができ、結果好条件での成約が見込めます。
また、敷地の全体が確認できるためイメージがつきやすく、隣接地との境界付近も確認できます。
買主が引渡し後すぐ住宅施工できる
購入検討者の多くは、できれば早く物件を買いたいと考えています。今必要ない方は具体的に探していません。解体してあればスムーズに住宅施工でき、買主にとってメリットになるため、結果好条件での成約に繋がります。
解体費用が必要
戸建てを解体するには、費用が発生します。解体費用は戸建ての規模や構造によって異なってきます。
一般的に木造の場合は1坪あたり5万円前後、鉄骨造の場合は1坪あたり7万円前後、鉄筋コンクリート造の場合は1坪あたり8万円前後となります。
ただ、土地や前面道路の広さ、近隣とのスペースによって解体が一部手壊しとなる場合や戸建てにアスベストが含まれていたり、地中に鋼管杭がある場合は費用がアップしますので注意しましょう。
また、すぐ更地にしたいと思ってもできず、解体工事には規模にもよりますが、およそ2週間が必要となります。
固定資産税が高くなる
戸建てを解体することにより土地の固定資産税が高くなります。アップ幅はおよそ3〜4倍で、物件によっては6倍ほど上がることもあります。
ただ、すぐに上がるわけではなく1月1日時点で判断をします。例えば2021年7月に戸建てを解体した場合、2022年1月1日時点で戸建てが解体されたと判断され、4月頃届く固定資産税納税通知書の土地の納税額が上がることになります。
近隣の方にも迷惑を掛けているような朽ちた戸建ての場合は解体した方が良いでしょう。
また、戸建てを探している買主の多くは、新耐震基準以降の物件を探しています。新耐震基準とは、1981年(昭和56年)6月1日以降に建築確認を取得した物件のことです。旧耐震(1981年5月31日以前)の戸建てはよっぽど程度が良くない限り、解体をおすすめします。
自然災害などで近隣の方に迷惑を掛けてしまうリスクを防げます。
次に築古の戸建てを解体をせずに売り出す場合を見ていきたいと思います。
解体費用が不要
戸建てをそのまま残すため、解体費用が不要です。戸建てが残るため、土地を探している方以外にも戸建てを探している方もターゲットに含めることができます。
購入できる層が広がることは好条件での売却にも繋がります。また、解体する期間もいらないため、すぐ売り出しできます。
固定資産税の優遇
戸建て解体しないため、土地の固定資産税がアップしません。ただ、戸建ての固定資産税はもちろん必要となりますが、築古物件であれば固定資産税はそれほど高くないはずです。
それよりも解体した方が土地の固定資産税が高額となり負担が増える可能性が高いです。
見栄えの問題
戸建てがかなり古く見栄えが悪い場合は、購入検討者からマイナスな印象を与えてしまう可能性があります。
戸建てが残っていると土地全体を確認できず、近隣との境界付近も確認できないことがあります。
また、買主に解体費用の負担があるため、価格交渉の要因となる可能性が高くなります。
契約不適合責任の可能性
戸建てをそのまま引き渡す場合、契約不適合責任を問われる可能性があります。契約不適合責任とは、物件が種類・品質及び数量に関して契約内容に適していない場合に発生する売主の責任を言います。民法改正前は瑕疵担保責任と呼ばれていました。
例えば、契約内容で雨漏りがないとした戸建を引渡し後に雨漏りが発覚してしまった場合、契約内容に適しておらず、売主に責任が問われてしまいます。
ただ、買主との交渉によっては契約不適合責任免責にできる場合があります。
まだ建物として使用できる物件は建物を残して売り出したほうが良いでしょう。土地探しの方だけではなく、戸建てを探している方も含まれるため、購入検討者の幅が広がります。
結果、好条件で成約できる可能性が高まります。新耐震基準以降やメンテナンスやリフォームを行なった物件は解体せずに売り出すことをおすすめします。
早く売るためには見栄えを優先し、買主の余分な手間を省いた方が良いので、建物を解体した方が良いでしょう。
また、一般の顧客ではなくプロの不動産会社に買い取ってもらう場合は早く売ることが可能です。
その場合は解体せずそのままで売ることも可能ですが、金額は相場を下回る可能性が高いことを知っておきましょう。
高く売るためには土地だけではなく、物件を探している方もターゲットにするため、そのままで売り出すことをおすすめします。
その際、アピールポイントとして必ず「建物解体渡し可能」という文言を入れましょう。
そうすることで、土地・戸建てどちらの顧客も検討可能です。
業者にも得意と不得意があります。つまり、築古戸建ての売却が得意な業者へ依頼することによって物件が早く、高く売るためのポイントです。業者は今まで成約してきた物件によって売却のノウハウが蓄積されています。
インターネットのポータルサイトなどで築古物件を多く扱っている会社を選定し、過去の成約実績などを確認すると良いでしょう。
次は実際に売却を進める手順を見ていきましょう。
まずは不動産会社へ査定依頼しましょう。この時に不動産会社へ解体しない状態での査定と解体した場合の査定両方を依頼しましょう。
合わせて建物解体費用の見積もりも依頼しましょう。
解体して売り出す場合はこのタイミングで解体を行います。解体スタートしてから2週間程度かかりますが、業者は解体を始める前に役所への書類提出や近隣挨拶を行います。
依頼から解体完了までは3週間以上かかることもありますので、早めに解体業者のスケジュールを確認した方が良いでしょう。
不動産会社と媒介契約を締結してから売り出しがスタートします。媒介契約を締結する際に売り出し価格も決定します。
売り出しスタートすると購入検討者から反響があります。検討者が購入を決断した場合、購入申し込み不動産会社を介して購入申込書が買主から提出されます。
申込書に購入価格などの条件が記載されていますので、確認して回答をします。条件が合えば売買契約に進みます。
戸建てを残したまま売り出し、結果売主側で解体することになった場合は、売買契約の特約事項で引き渡しまでに売主が解体する旨の文言が入ります。
売買契約の内容によって戸建てのままか、解体するか決まっていますので、しっかり契約内容通り行って引渡しをします。
相続した築古物件が空き家で昭和56年5月31日以前に建築されていた場合は、不動産譲渡所得税の控除を利用することができる可能性があります。
ただ、要件に「戸建てを解体する」もしくは「耐震リフォーム(耐震性がある場合は不要)」して買主に引き渡す必要があるので注意が必要です。
詳しくは国税庁の公式サイトでご確認ください。
今回は築古戸建て物件を売却するときの解体について解説しました。
一概にどっちがいいか言えるものではなく、それぞれメリット・デメリットがあります。
ご自身の状況によってどちらが適しているか、今回の記事を参考にしていただきながら売却を進めていただければと思います。
不動産会社の担当者に全て任せっきりにするのではなく、しっかりご自身でも納得した上で好条件での売却を実現しましょう。