不動産投資には、土地や建物がセットになっていて既に完成している物件を購入するパターンと、自身で土地を探し、購入した上で新築物件を建てるパターンとがあります。
前者の場合は、不動産会社などから物件を紹介してもらうなど、比較的スムーズにいきますが、後者の場合には、理屈が分かっていても、契約の流れ、融資の流れなど具体的にどのように動いたら良いか分からない方が多いようです。
では、土地から購入して新築物件を建てる場合は、どのように進めると良いのでしょうか。
また、その際の注意点にはどのようなことが挙げられるのでしょうか。
こちらの記事で解説していきますので、ぜひ最後までお付き合いください。
まずは土地から購入して、建物を立てる流れについて把握しておきましょう。
不動産投資をしていく上で、収益を上げるために必要な要素は何でしょうか。
最も大切なのは、入居者(=家賃を落としてくれる方)がきちんといるエリアを選定することです。
日本は少子高齢化社会に突入しており、今後も国全体の人口は減少していく見込みです。
しかし、どのエリアも比例して減少していくわけではありません。
急激に減っていく地域がある一方で、今後人口の増加が見込めている地域があるのも事実です。
以下は、2015年と比較して2045年の人口が「10%以上」増加することが予想されている東京23区の自治体です。
千代田区(32.8%増)、中央区(34.9%増)、港区(34.4%増)、文京区(13.3%増)、
台東区(16.4%増)、江東区(16.7%増)、品川区(14.2%増)、練馬区(10.1%増)
不動産投資に限らず、どんな業界にも言えることですが、人が少なくなると商売が成り立たなくなります。
エリアの選定に際しては、今後の人口増が見込める=賃貸需要が少なくとも維持されるような地域を選ぶべきだといえるでしょう。
不動産投資で土地から購入する場合に、坪単価が安いものを手に入れるに越したことはありません。
しかし、安いからと言って即決するのは少々リスクがあります。
安すぎる土地では、都市計画法で何らかの規制に引っかかる可能性があり、他の不動産投資家から敬遠されている可能性があるからです。
具体的には、ご自身が建てようと考えている建物と、そのエリアの「建ぺい率」や「容積率」まで見ておく必要があります。
都市計画における用途地域ごとに、建ぺい率は30%~80%の範囲で、容積率は50%~1300%の範囲で定められています。
「〇〇市 建ぺい率」、「〇〇市 容積率」といった形でインターネットで検索することができますので、気になるエリアについては調べておくと良いでしょう。
土地から新築を建てる際には、さまざまな費用がかかります。
新築アパートを例にした場合には、
アパート本体の工事費
電気、給排水などの付属設備工事費
外構などの付帯工事費
登記費、司法書士費などの各種諸費用
印紙税、登録免許税などの各種税金
これらにかかる費用と金融機関からの借入金額、月々のローン返済額と家賃収入などをシミュレーションする必要があります。
自己資金がなかなか準備できない方のために「つなぎ融資」という制度があります。
これは、実際に融資が実行されるまでの一時的な資金として借りることが出来るものです。
便利な制度ではありますが、土地の取得資金や建物の建築資金などに使用用途が限定されている点や、借入金利が割高であることや、元金は一括で返済しなければならいないといった点に留意する必要があります。
工務店やハウスメーカーの選定を行います。
工務店は、会社の規模がそこまで大きくないため、予算を抑えられる可能性があります。
狭小地や変形地でも柔軟に対応してもらえる可能性があるなど、オーナーの希望に沿った対応を期待することができます。
ハウスメーカーはサポートが充実している一方で割高な感は否めません。
また、投資用不動産の「型」が決まっているものが多いため融通が利きにくいこともあります。
しかし、融資を引き出す上では工務店よりもハウスメーカーに分があると言ってよさそうです。
工務店やハウスメーカーには、メリット・デメリットがあります。それぞれ複数社の見積もりを取って決定するようにしましょう。
どこの金融機関から融資を受けるかどうかを決めます。
金融機関は、オーナー自身の属性(年収・勤務先・勤続年数・他の借入状況)の他に、物件の担保力も見ています。
万が一、オーナーがローン返済出来なくなってしまった場合に、売却してローン費用を回収できるのかという視点です。
その不動産がどれだけの家賃収入を得ることが出来るのかといった収益力とも連動しています。
そのため、中古物件と比較すると、新築物件の方が融資を受けやすいといえます。
土地から購入して新築物件を建てる際には、どのようなことに留意すればよいでしょうか。
特に大切な3つのポイントです。
1つ目は、都市計画における用途地域の確認です。
用途地域によって、建ぺい率や容積率が異なってきます。きちんと確認しておかないと自分が建てたい建物が建てられない可能性がありますので、注意する必要があります。
このようなことにならないように、土地を購入する前に、必ず建物のプランニングを行うようにしましょう。
2つ目は、費用面です。
既に建物ができている建売と比較すると、土地から購入して建物を立てる方がどうしても高額になります。
特注建物の扱いになるため、1物件のために材料などを発注しないといけないからです。
また、自己資金がないと金利の高い「つなぎ融資」を利用して初期にかかる費用を支払わなければならない点も留意が必要です。
最後にエリア選定です。
不動産投資の成功のカギは、いかに家賃収入を得られるかです。どんなに立派な物件を建てても入居ニーズがなければ、上手くいきません。
一時、土地を持っている地主向けにアパート経営をすすめる話がよくありました。何もしていない空き地を活用して、家賃収入を得ながら税金対策にもなるという一石二鳥の話ですが、中には賃貸ニーズがない土地でアパートを立てて、借金だけ残されて自己破産した方もいらっしゃいます。
本当に賃貸ニーズがあるエリアなのかどうかをきちんと見極めるようにしましょう。
では、土地から新築物件を立てるのはどのような方にオススメなのでしょうか。
既に土地を持っている方は、新築の投資用不動産を建てることがオススメです。
土地を活用せずに放置してしまうと固定資産税や都市計画税が高額になってしまうことをご存知でしょうか。
「住宅用地の特例」によって、住宅が建築されている土地には税金の軽減適用がされるのです。
「住宅」といっても居住用だけではなく、賃貸アパート、賃貸マンション、賃貸戸建てなど投資用不動産にも適用されます。
具体的な軽減適用については以下の表の通りです。
固定資産税の 課税標準額 | 都市計画税の 課税標準額 | |
一戸あたり200㎡までの部分 ※小規模住宅用地 | 評価額×1/6 | 評価額×1/3 |
一戸あたり200㎡を超える部分 ※一般住宅用地 | 評価額×1/3 | 評価額×2/3 |
建売の新築や、中古物件では、建物の細かい部分まで選ぶことができません。
オーナーを務める物件の外観・内装・設備にこだわりがある方は、自身で土地から購入して新築物件を建てる方が良いといえるでしょう。
さらにいえば、ハウスメーカーよりも工務店の方がオーナーの希望に沿った対応を期待できる可能性があります。
ご存知のように金融機関からの融資が実行されるのは、建物が引き渡される時です。
土地を購入し、投資用不動産を建築する場合には、引渡し前に「契約金」や「着工金」などを支払わなければなりません。
自己資金で賄うことが出来ない場合には、「つなぎ融資」等で一時的にお金を借りる必要がありますが、前述のように金利が割高となります。
資金に余裕のある方であれば、つなぎ融資を利用せずとも、自己資金のみで融資が下りる前にかかる費用を支払うことができるため、余計な金利を支払わずに済みます。
建売の新築物件は、建物の建築に必要な資材をまとめて購入したり、工事を効率的に進めることが出来ることから、土地から購入して新築物件を建てるよりも、費用面では割安になります。
一方で、設計は既に済んでしまっているケースがほとんどであることから、自由度はほとんどないといえるでしょう。
また、工期にも差があります。
建売は完成している物件であれば引き渡しまでに1ヶ月~2ヶ月、建築前であれば4ヶ月~5ヶ月です。
一方、土地から購入して新築を建てる場合には、土地探しや購入までに3ヶ月~6ヶ月程度かかるため最終的に引き渡されるまで8ヶ月~10ヶ月程度かかると考えておいた方が良いでしょう。
土地を所有していない方や、すぐに始めたい方にとっては、建売も1つの選択肢であるといえます。
不動産投資において、土地から新築物件を建てる場合の進め方を解説してきました。
ご理解いただけたでしょうか。
土地を既に所有している方や、建物にこだわりの強い方は、こちらの記事で紹介した留意点を参考にしていただきながら進めていただくことをオススメします。