インタビュー

対談/不動産投資の視点で空き家問題を考える(Vol.2)

2021/05/21
対談/不動産投資の視点で空き家問題を考える(Vol.2)

※本記事は連載記事(全2回)です。前編記事はこちら
対談/不動産投資の視点で空き家問題を考える(Vol.1)

行政も民間も深刻な問題と認識しつつ、根本的な解決方法が見出せない空き家問題。前回に引き続き、今井雅人衆院議員とアジアゲートホールディングス株式会社の松沢淳会長による、「空き家問題解決のため、行政や民間ができること」についての対談をお届けします。

人口流入を増やすための街づくりが必要

テーブルの上に座っているスーツを着た男性

低い精度で自動的に生成された説明

今井 やはり、外からの流入を増やすには、街が整理されてオシャレじゃないと難しいですね。商業目的の流入の場合は、街の雰囲気を気に入ってもらえれば増えるのですが、それでも住むということになると少し別のハードルがあります。周りの住民の年齢層が高くて、若い人が住みたがらないんですよ。とくに、ゴーストタウン化した街などは、ほとんどが高齢者ですからコミュニティが成り立たないですから、1軒1軒の問題ではなく、先ほどの話の区画整理のようにまとまった形で再生しないと問題は解決しないですね。

松沢 若い人の場合は子供のコミュニティも必要になりますので、地方の過疎エリアは難しいですね。 

今井 同じ過疎エリアでも飛騨高山のような観光資源のあるエリアはまだ可能性があるんですよ。しかし、そういう資源のないゴーストタウン化した街は本当に難しいです。 

松沢 そうなると、今度は街づくりの話になってきますね。 

今井 まさにそういうことになります。例えば可児市には元々某私大のキャンパスがあったのですが、そこが撤退してしまったんですよ。結局、そこへ岐阜医療科学大学が入ってくれましたので救われましたが、そういう大学などを誘致できると、学生の住む家の確保のために空き家になりそうだった団地の住宅を使うとか、いろいろな手が打てます。 

空き家問題解消のために求められる民間からのアイデア

松沢 空き家問題の解消のために、行政が進めているようなことはありますか?

今井 2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」がありますが、基本的に国は制度を作って自治体を応援するというスタンスで、国が主導して何かをするということはないです。事例集のようなものも作っており、情報宣伝活動はしていますが、国ができることはそこまでですね。このほか、関連するものではコンパクトシティ構想のなかで規制緩和をしたりしているので、その対象エリアで空き家の利用価値を高めているものがあるかもしれません。

松沢 特区を作ろうという流れもありましたね。

今井 空き家に関してどこかに特区を作っても、そこで何をすれば有効なのかわからないですね。例えば、先ほどの話にあった接道の規制がボトルネックになっているから規制を緩和したいという話にしても、それが自治体の裁量でできるものならば特区にする必要はありません。ですから、問題を解決するために今のこの規制がボトルネックになっているから緩和してほしいという順番でなければ特区は作れません。 

松沢 たしかにそうですね。実需がないと難しいですね。 

今井 実需がなければ、行政主導で特区を先に作っても意味がありません。ですから、自治体では動かせないボトルネックを特区認定によって動かすことで、需要を拡大できるというものなら価値はあると思います。

松沢 やはり、先ほどの話にもありました、呼び水的な施設を作るとか、そういう人を集める核を作ることが必要になりますね。 

今井 それと働き口が必要ですね。そういう意味で参考になる例が、郡上市の石徹白(いとしろ)にあります。ここは街中から遠く離れた人口500人程度の村ですが、移住人口が大幅に増えて注目を集め、全国から視察団が殺到しています。きっかけは、ある若者が中心になって行った小電力事業でエコタウンを作ったことでしたが、なかにはこういう成功例もあります。 

まとめ

松沢 空き家問題を解消するカギは、民間によるソリューションと実需の提供ということになりそうですね。

今井 行政に完全に頼りっきりではダメということですよ(笑)。ただし、みんな非常に深刻な問題としてとらえていることは間違いないです。人が住まなくなるとネズミが増えて近隣に被害が及んだり、ほかにもさまざまな問題が生じます。ですから、この問題を解決したいという強い気持ちはありますので、御社のような空き家問題の解決につながるビジネスの潜在的な需要は非常に大きいと思います。

松沢 そこは私たちも可能性を感じています。とくにこの分野は成功例が少ないので、逆にそこにこそビジネスチャンスがあると思っています。早く成功事例ができるといいんですけど…。

今井 それは絶対に必要ですね。石徹白の話もそうですが、みんな成功事例を待っているんですよ。成功事例ができるとすぐ視察団が殺到して、一気に広がりを見せると思いますので、ぜひがんばってください。


対談者プロフィール

今井雅人(いまいまさと)氏(衆議院議員)

1985年三和銀行入行。1989年より5年間、同行米国シカゴ支店で勤務。2004年UFJ銀行資金為替部門における統括次長兼チーフディーラー職を最後に同行を退職。その後、金融情報会社を設立し、同時に経済アナリストとして、各方面で講演や執筆活動を行う。
平成29年10月の第48回衆議院選挙で四期目当選。衆議院内閣委員会理事、予算委員会委員。

松沢淳(まつざわ あつし)氏

株式会社アジアゲートホールディングス 代表取締役会長 1989年、株式会社住友銀行(現株式会社三井住友銀行)入社。その後、トールエクスプレスジャパン株式会社取締役、株式会社廣済堂社外取締役などを経て、2020年7月に株式会社アジアゲートホールディングス代表取締役社長に就任、2020年12月会長へ就任。

前編記事

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木村敬

株式会社ウイット 代表取締役
各雑誌、書籍、webコンテンツなどにおいて、エンタメ情報、金融関連情報などを取材・執筆。空き家問題ほか、不動産関連のお役立ち情報をお届けします。

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