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相談実例集

一棟投資アパートの購入をやめられた相談実例

八木 チエ
2020/03/142020/03/16

区分マンション投資と比較して、一棟アパート経営のキャッシュフローがいいことから、ご興味を持たれた方も多いのではないでしょうか。

H様も一棟アパートのキャッシュフローに魅力を感じ、一棟アパートの業者から提案を受けました。

しかし、ご自身ではなかなか購入までの判断ができず、インターネットで私の記事をご覧になり、第3者の立場からのアドバイスが欲しいとのこと。

個人面談希望のご連絡をいただき、物件の購入相談を対応させていただきました。

面談の結果

面談の時に、H様は業者からの提案資料一式をお持ちいただき、資料を見ながら面談をいたしました。

結果から申し上げますと、ご提案いただいた物件の購入を断念しました。

ご自身の状況を再分析して、区分マンション投資物件も視野に入れて新たな物件を探すことになりました。

H様の属性

H様の属性は下記の通りです。

  • 勤務先:製造業上場会社
  • ご年収:800万円(世帯年収1,200万円)
  • 年齢:32歳、既婚。奥さんとの2人家族
  • 金融資産:株投資200万円
  • 相談内容:一棟アパートの投資を検討しているのですが、実際に提案を受けている物件の購入をなかなか決断ができないことからアドバイスを希望。物件の選び方、投資プランのプランニングについても合わせてアドバイス欲しいとのこと

提案を受けている物件を分析

まずは物件資料を基に、その物件について分析させていただきました。

H様は大阪ご出身で、1年後に大阪に戻って独立する予定をしているため、大阪エリアの物件を探していました。

提案物件の概要    

H様は下記物件の提案を受けていました。

  • 物件価格:1億2,000万円
  • 築年数:新築
  • 土地面積:200平米
  • 建ぺい率/容積率:60/300
  • 用途地域:準工場地域
  • 部屋数:10部屋
  • 部屋面積:20平米
  • 最寄り駅まで10分
  • 家賃設定:60,000円/部屋
  • 表面利回り:6%

物件の懸念点

物件概要を踏まえて、下記の懸念点を挙げさせていただきました。

①用途地域による地価が低い

まずは用途地域について、懸念点を挙げました。

住居用の賃貸物件として経営していくのであれば、用途地域はやはり住居地域、もしくは商業地域が理想です。

こちらの物件は準工場地域にあり、もちろん住居として住むことも可能ですが、工場が建てられる地域でもあります。やはり住居地域などと比較して周りの環境が劣ってしまいます。

また、用途地域によって地価にも影響されます。準工場地域の地価は比較的低くなりますが、物件価格から見ると土地の価格が高く設定されている可能性が高いです。

一棟投資物件のメリットの一つは、建物が古くなりたとえ評価価値が無くなったとしても、土地の価値が残るというところです。こちらの物件は売却価格から算出土地の価値の割合が低くなるため、将来更地として売却しても苦戦するリスクが高くなると言えるでしょう。

②物件価格が高い

物件価格は1億2,000万円と設定されているのですが、土地の広さから計算すると、物件価格の割合は非常に大きく取られている事がわかります。

一棟投資物件の場合は、建物が老化していくため、建物より土地の評価割合が大きい方がいいと言われています。

新築の場合は物件の材料、人件費、販売費など様々なコストがかかっているため、そのコストを全て物件価格に入れざるを得ないのですが、この物件においては土地の評価価格の割合と逆転しています。

もし購入を前向きに検討するのであれば、価格交渉は必須ですが、担当者の話では価格交渉は難しいだそうです。

③想定家賃の根拠がほとんどない

新築物件の場合は、周辺エリアの家賃相場を調べて、新築プレミアムを乗せて賃料を設定するケースがほとんどですが、こちらの物件の賃料設定となる根拠資料はほとんどありませんでした。

完成前の物件で賃貸募集前なので、実際にその賃料で入居者が決まるかどうかも未知数と言えます。

また、新築で一部屋の賃料が60,000円となると、この先中古物件となった時に賃料が下がっていきます。それに合わせて利回りも下がり続けますので、非常に危険な持ち方になってしまいます。

④入居者の質によって物件の価値が決まる

高級賃貸物件は賃料高いですが、その賃料を払える方が住むことになりますので、高所得者にあたります。

入居者の質が高ければ高いほど物件を大切にしてくれますし、交流する人もレベルが高いので、物件に対して悪いダメージを与えることは考えにくいです。

一方で家賃の低い物件は、その家賃を払える人が住むことになるため、管理の手間や事件になるリスクも高くなります。

もし事故物件になると、更に家賃を下げたり、売却してもなかなか買い手がつかなかったり、返済に追われて自己破産に追い込まれる可能性も大いにあります。

一棟投資物件にこだわる必要はない

H様に上記の懸念点を話したところ、提案を受けている物件の購入を断念しました。

1年後に独立を検討していることもあり、今の会社に勤めているうちに不動産投資を始めたいと、少し焦っていた自分がいると反省をし、再度不動産投資のプランニングを練り直したいとアドバイスを求められました。

個人だけの年収で融資を考える

H様は奥さんの年収も含め世帯年収で融資を考えていましたが、そうすると奥さんも融資を背負うことになります。

融資額が多ければ多いほど返済が大変になります。初心者の場合は、世帯年収で融資をするのは非常にリスクが高いと私は思っています。

H様個人だけの年収で見ると800万円です。たとえ10倍までの融資枠で考えた際にも8,000万円が上限額となりますので、その枠内で物件を検討した方がいいとアドバイスをしました。

独立後の収入差もシミュレーションする

今はサラリーマンだから毎月の収入はほぼ確定されていますが、独立後もすぐ安定した収入が得られるとは限りません。

従って、今の収入で返済シミュレーションをしてしまうと、独立の収入が想定通りにうまくいかなかったり、空室期間が続いてしまったりなどのリスクを回避することが難しくなります。

数か月間の空室でも返済できるように、余裕のあるシミュレーションをするようにアドバイスしました。

区分マンション投資も視野に入れる

上記を踏まえて、一棟投資物件にこだわるのではなく、区分マンション投資も視野に入れることを話しました。

今のH様の属性では、物件価格にもよりますが、2物件の同時購入ができる可能性もありますので、空室リスクをおさえやすい立地を選定して購入するのも一つの選択肢と言えます。

「区分マンションのメリット」に関しては下記でも解説していますので参照してみてください。

関連記事:区分マンション投資をするメリット・デメリットを徹底解説

まとめ

一棟投資物件ならではのメリットはもちろんありますが、物件を判断するポイントも多くなり、経営していく上で様々なリスクも出てきます。

特に初心者の方は管理に慣れておらず、様々な想定外の出費により、どんどんキャッシュフローが悪くなるケースも少なくありません。

もちろん一棟投資物件を否定しているわけではないですが、自分に合っているのか、身の丈に合った投資プランであるのかを、きちんと見極めるようにしていただきたいです。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ不動産プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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