不動産投資とは

不動産投資は個人名義と法人名義のどちらにすべき?それぞれのメリット・デメリットを徹底解説!

2021/03/25
不動産投資は個人名義と法人名義のどちらにすべき?それぞれのメリット・デメリットを徹底解説!

投資用不動産を所有している方の多くは、個人名義で不動産投資を行っているのではないでしょうか。

しかし、個人名義ではなく法人名義にして不動産投資を行っている方がいるのも事実です。

どちらもメリット・デメリットがありますので、ご自身の属性、投資規模などに合わせて検討する必要があります。

こちらの記事では、個人名義や法人名義で不動産投資をする際のメリット・デメリット、留意点について解説していきます。

個人名義と法人名義で不動産投資をする際の税金の違い

個人名義と法人名義で不動産投資をする際に、どちらの方にメリットが大きいのかを判断する大きな要因として「税金」の違いが挙げられます。

個人名義で不動産投資を行う場合、所得が大きくなればなるほど累進課税によって税金の支払い額も大きくなります。

下記が個人名義で不動産投資を行った際にかかる所得別の税率です。

所得が4,000万円以上の方は、税率が45%(この他に住民税が10%)という大きな数字になっています。

 

出典:国税庁

法人名義で不動産投資を行う場合の税金はどのようになっているのでしょうか。

下記の表をご覧ください。

税率だけを見ると法人の方が個人よりも優遇されていることが分かります。

 

出典:国税庁

個人名義で不動産投資をするメリット

規模が小さければ、手間はほとんどかからない

不動産投資の規模が小さい方にとっては、個人名義で行っていると、ほとんど手間がかかりません。

入居者がいる場合には、管理業務や集金業務、家賃催促など基本的に管理会社の方がやってくれます。

また、入居者がいない場合でも入居者募集などの客付けも管理会社の方でやってくれるケースが多いです。

やることといえば、年に1回の確定申告月に1回の管理会社とのやりとりくらいです。

つまり、ほとんど手間がかからないと言えるでしょう。

近年、サラリーマンやOLをはじめ、様々な職業の方が副業で不動産投資を行うケースが増えていますが、この手軽さが人気の要因の1つでもあるのです。

不動産所得が損益通算できるなど、税制優遇を受けることができる

確定申告を行った経験のある方はご存知だと思いますが、損益通算とは、損失が出た部分を総所得の計算を行う際に控除できるというものです。

例えば、不動産投資においては、家賃収入からローンやその他の経費を引いた段階で、プラスであっても(つまりキャッシュフローがプラスでも)、減価償却費の計上などによって不動産所得は赤字というケースがあります。

不動産所得が赤字の場合、勤め先の給与の所得と赤字を相殺することが可能で、総所得金額を低く抑えることができます。

個人名義で不動産投資をするデメリット

規模が大きくなると所得が上がり、税金の負担が大きくなる

前述のように、日本においては所得税法で累進課税が採用されています。

不動産投資の規模が拡大し、総所得が大きくなると税率が上がり税金の負担が大きなものになります

区分マンション1件や2件くらいであれば、個人名義のままでよいと思いますが、ある程度規模が大きくなってきたら、法人名義とすることも検討の余地があるといえます。

経費の調整が難しい

個人名義で不動産投資を行う場合、減価償却費は「強制償却」となります。

今年は、減価償却費を計上しなくても、十分赤字だから来年以降に回そう・・・というわけにはいきません。

つまり、当該年の減価償却費は当該年で経費計上する必要があり、翌年以降に持ち越すことはできないということになっています。

法人名義で不動産投資をするメリット

役員報酬などの計上により税金対策ができる

法人名義で不動産投資を行う場合、親族などを役員として役員報酬を支払うことによって親族内で所得の分散を図ることが可能になります。

また、役員が退職した際の退職金も損金として計上することもできます。

この他にも、個人と比較して法人の方が経費として認められるものが多くあり、不動産投資事業に必要な経費であれば、損金として計上することができます。

もちろん、役員報酬が支払われている方は、報酬に見合った仕事をすることが前提となりますので、注意が必要です。

経費の調整がしやすい

前述した個人名義のケースでは、減価償却費の「強制償却」により経費の調整が難しいことを述べましたが、法人名義の場合は強制償却ではなく、限度額の範囲内であれば、任意に減価償却費を調整することができます。

つまり、赤字の年は減価償却費を少なく計上し、黒字が出た際には減価償却費を多く計上するということが可能なのです。

金融機関からの信頼度が上がり、融資を受けやすくなる

個人名義の不動産投資の場合、金融機関はある一定の金額以上は中々融資してくれない状態になるケースもあります。

当然、貸す側にとっては、貸したお金が返ってくることが前提なので、借入額が非常に大きい個人に対して、追加融資を行うのに一歩立ち止まるのも無理はありません。

一方で、法人名義のケースでは、決算書をもとに判断してくれるので財務的に健全な状態であれば融資してもらいやすくなります。

不動産投資事業を拡大したい方にとっては、融資を受けやすい法人名義の方を検討するとよいかもしれません。

法人名義で不動産投資をするデメリット

 法人設立費用や税理士報酬などがかかる

法人名義で不動産投資をする場合、登記費用など法人設立のための費用がかかります。

また、税理士報酬なども30万円前後かかるため、規模が小さいと法人の利益を大きく圧迫することになります。

 書類作成などの手間がかかる

個人名義の際には、そこまで手間がかからなかった書類作成法人名義にすると非常に煩雑で手間がかかるようになります。

帳簿の作成税務申告まで1人でやり切るのは難しいといえます。

 赤字でも税金がかかる

法人で赤字だと税金を支払う必要がない・・・これは大きな間違いです。

もちろん、赤字で支払わなくてよい税金もありますが、必ず支払わなければならないものもあります。

例えば、「消費税」です。法人の損益とは無関係になります。消費者から受け取った消費税を納めないわけにはいかないのです。なお、設立2年未満の会社は「免税事業者」となり、消費税の納付義務がありません。

また、法人住民税の均等割」も赤字であっても必ず納めなくてはなりません。損益には関係なく法人の規模に応じて課税金額が決定されます。

ちなみに、東京23区内の法人の場合、資本金が1,000万円以下かつ従業員50人以下の場合は、法人住民税の均等割は、7万円となっています。

どのくらいの規模であれば法人名義で行った方がよい?

どのくらいの規模であれば法人名義で行った方が良いのでしょうか。

それぞれの名義を持つときのメリットとデメリットがありますので、どのくらいの規模で法人名義にした方がいいのかの一つの判断基準として、税率と言えます。

資本金1億円以下の法人で年800万円以下の部分に対して、法人税率は「19%」となっており、800万円を超える部分は「23.2%」になっています。

つまり、個人名義で保有して課税率が19%を超えた場合、法人名義の変更を検討するといいでしょう。

しかし、実際に所得税では年収330万円以上になると、税率20%となっていますが、金額が少ない分、個人名義の方は税金が断然安くなります。

よって、税率を一つの基準に具体的に税額も試算した上で、法人名義の方が税金が安くなった時に名義変更を検討するといいでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

個人名義と法人名義で不動産投資を行う場合のメリット・デメリットについて解説してきました。

比較検討していただき、法人名義にした方がお得になるケースでは、思い切って法人名義にするのも1つの手です。

どちらにしたらよいか悩む方は、専門家に相談してみると良いでしょう。

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八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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